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日本はマンガのハリウッドである。良い意味でも、悪い意味でも。一般のアメリカ人がハリウッドの映画だけで満足すると同じように、一般の日本人は日本のマンガだけで満足している。読み慣れたコマ割り、読み慣れた物語の進み方、読み慣れた「記号」は、読者にとって読み心地が良くて、外国のマンガをたまに目にしても、なかなか読む気にはならないらしい。 しかし、ハリウッド映画以外にも良い映画がたくさんあるのと同じように、日本マンガ以外にも良いマンガはたくさんある。幸い、その一つであるダニエル・クロウズ作の『ゴースト・ワールド』は昨年和訳された。1985年に24歳でデビューしたクロウズは米国のアンダーグラウンド・コミックスの第一人者の一人で、『ゴースト・ワールド』のほかに『CARICATURE』や『DAVID BORING』など、評価の高い作品を次々と発表してきた。クロウズの初期の作品には「アングラ」にありがちな要素−−暗さ・シニカルさ・シュールさ−−が揃っていたが、作者が成長するにつれてその内容とスタイルが一言にまとめられないものに成熟してきた。『ゴースト・ワールド』など最近の作品にも暗い要素や微妙にシュールな要素が残っているが、登場人物がシニカルな態度をとっても、クロウズは決して彼らをシニカルな視点から描くことはない。どんなヘンテコリンなキャラクターに対しても、クロウズは尊重と理解と愛をもって、誠実に描く。 『ゴースト・ワールド』の主人公、高校を卒業したばっかりのイーニドは、周りの人間を見下したりからかったりして、一見クールでシニカルに見えるが、実は彼女は将来について深く不安を感じる。そして、商業主義により均質化された消費社会のなかで育ったイーニドは、服装やヘアスタイルのみならず性格まで繰り返して「衣替え」してみたり、「ホンモノのナニカ」を求め続ける。 決して写実的とは言えない、しかし妙にリアリティを感じさせるクロウズの筆によって描かれるイーニドの世界は、薄っぺらなようで極めて深い。日本のマンガと違った良さを持つ、映画化もされたこの作品を、だまされたと思ってぜひ読んでみてもらいたい。 (マット・ソーン=京都精華大学マンガ学科准教授) |