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ほとんどの日本のマンガの物語は、お約束的な手法によってスムーズに運ばれる。だが、その約束事のために多くの作品が似たような味になる。そう感じる読者にとって、ジェフ・スミスの『ボーン』は新鮮に感じるはずだ。スミスは読者を物語の正面玄関から入れるのではなく、主人公と一緒に裏の通風ダクトから放り込んで、寄り道をさせながら物語の奥へと引きずりこむ。 一緒に放り込まれるフォン・ボーンという主人公はまっすぐで賢くて優しくて、性格的には主人公らしいが、外見は抽象的でスマーフか痩せ型のムーミンを思わせるような可愛いものである。そのキャラクターがドラゴンやお姫様も出てくるような本格的なファンタジーの主人公になるわけだ。 そんな無理な設定を読者に納得させるのが、スミス氏のキャラクターの内面や絡み合いの絶妙な描写、そしてファンタジーというジャンルの約束事に対するアイコノクラズム(偶像破壊)である。 「親子で楽しめる」といわれる作品は親も子も楽しめないことが多いが、『ボーン』の場合はそれは嘘にならない。『光の碁』や『ワン・ピース』にハマっているうちの9歳の息子が何気なくパパの『ボーン』第1巻を手に取ったと思ったら、他のマンガやテレビがそっちのけで夢中になっていた。 スミスはアニメーションの仕事もしてきたが、その経験が『ボーン』に現れている。ギャグのタイミングが抜群で、最小限の線でキャラクターの表情をうまく表現する。アメコミが苦手だという日本の読者でも、スミスのきれいな描線とデザイン・センスを評価するだろう。 日本のマンガと比べるとずいぶんとゆっくりしたペースだが、スミス氏の魔術にかかった読者はその心地よいペースに抵抗なく乗せられてしまう。『ボーン』の魅力はきっと作者の登場人物(生物?)に対する「愛」から生まれると思う。ツラレてキャラクターに惚れた読者は彼等をいつまでも見守ってあげたい気持ちになる。 |