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ずっと外国のマンガを紹介してきたが、なんせ訳されているものが少なく、ネタ切れ状態になってどうしようかなと悩んでいた。最近の日本のマンガで、紹介したいほど面白く感じるものがあまりないが、この間偶然学生と話していたらそのコがこの「私がいてもいなくても」(集英社)を勧めてくれた。読んでみたら、思いのほか真剣に感動した。 いくえみ綾氏と言えば、『別冊マーガレット』の永年の超人気作家だが、久しぶりに読んだらその訳を思い知らされた。今の『別冊マーガレット』は、どの作品も似たような絵柄だが、それはおそらく新人は皆編集者に「いくえみ先生のように描け!」と言われているからなんだろうか。そうか言われなくても新人は「いくえみ先生のように描きたい!」と思うのだろうか。どちらにしても、この作品も一見「いかにも『別マ』」という、お馴染みのいくえみスタイルで描かれている。そのへんの『別マ』作品と違うのは、中身。 もちろん恋愛の要素もあるが、僕が思うにはこの作品のテーマは、「自分を愛することの大事さ」である。どこの調査だったか覚えていないが、その調査によると今の若い日本人の七割ほどは、自分は駄目な人間だと思っているらしい。アメリカや中国では、そう思う若者は四割以下。前から、自分の学生や知り合いの高校生を見てそのことを強く感じたが、いくえみ氏はこの重要な問題を、なにげなく取り上げているように思う。決してお説教などせず、自然に読者の心をつかまえて主人公の安倍晶子に共感させる。 大人の読者でも、十分に共感できる。どのキャラクターも、等身大の人間として描かれていて、現実味溢れる作品になっていて、夢もある。近頃の話題作のマンガは、シニカルで皮肉の効いたものが多いが、いくえみ氏は手が届くはずの、バカにしちゃいけない夢を見せてくれようとしている。 |