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僕は今息子と一緒に囲碁にハマっている。息子は囲碁教室にも通っているが、その教室の生徒がここ二年ほど急激に増えている。僕達がハマったわけ、ほかの子どもたちがハマったわけは説明するまでもないだろう。『ヒカルの碁』(集英社・一冊三九〇円)が囲碁ブームを巻き起こしているのはあまりにも有名だから。 この欄では僕は主に大人向けの作品を紹介してきたが、今回はこの「大人にも読んでほしい少年マンガ」を紹介させてもらいたい。テレビアニメ化されるような少年マンガなんて、と思われる方もいらっしゃるかもしれないが、『ヒカ碁』を侮ってはいけない。作品の大前提--小学校六年の男の子が平安時代の天才棋士の幽霊に憑かれる--は確かにマンガチックではあるが、ほった氏の見事なストーリーテリングと小畑氏の美しい表現によってこの作品は少年マンガの未開の可能性を見せてくれる。一巻目の表現はオーソドックスな少年マンガと変わらないので、より高度なものを求める読者からすればそれほど面白そうではないかもしれないが、作者たちは一旦(少年の)読者をゲットしてから、『ヒカルの碁』をだんだんと少年マンガと思えないほどのレベルまで運んでいく。主人公のヒカル君はリアルタイムで成長するわけだが、その心身の成長につれて作品の表現もよりリアルで大人っぽくなっていく。 近頃の少年マンガは「キャラクターの魅力」と「必然性のない暴力描写」に頼り切っているものがほとんどで、読んでいる間はそれなりにワクワクするが、本当に心に残る(そして後世に残したい)ものが悲しいくらい少ない。そういったものに対して、『ヒカルの碁』はちゃんとした作品になっていて、今の少年・少女の読者は大人になったらきっと自分の子どもにも読ませたいと思うだろう。今の時代に、バイオレンスをまったく使わずに、全国の子どもたちの間に囲碁という知的で地味な競技を流行らせるなんて、普通は考えられないが、ほった氏・小畑氏はそのすごい腕でその「まさか」を実現したのだ。主人公のヒカルと同様、作者たちも「神の一手」を極めようとしているようだ。
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